孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

救いのない歌

1.貧乏で救いのない編

神田川南こうせつかぐや姫

貧乏はするべきだと思う。10年も経てばいい思い出になる。さて貧乏ソングの大定番である「神田川」である。あの当時の多くの歌はボロアパートで一人暮らしをしている若者が主人公だ。四畳半フォークとはよく言ったもので、トイレがないから共同トイレを使い、風呂がないから銭湯に行く。若い頃の私もそんなアパートの住人だった。8万5千円の給料は家賃と食費、また美容師という職業柄服飾費も多少ながら使い、講習費やレッスンに使う道具類も買わないとダメだし、ハサミのローンがこれまたイタい(笑)  友人たちと残りの金を握って安酒場に行けば毎月すっからかんになった。しかも私が勤めるミナミのサロンは一度遅刻すれば1万6千円も引かれる地獄のような給与システムだった(笑)   だから笑える程に金は無い。無いったら無い。そんな生活の中、私はジュウシマツを飼った。つがいだと思っていたのに後からわかる人に聞いたらオス2羽だった。その2羽を飽きることもなく眺めた。不自由だったけど寂しくはなかった。そして私の人生においても最も努力というものをした数年間だった。

《織江の唄》山崎ハコ

(多分)農家の娘である少女は中学卒業と同時に家を出て夜の街で働く運命だった。歌詞からは貧しい家計の口減らしとして娼館(?)に売られたことがわかる。本人も仕方ないことだと悲しい納得をしているが、見ず知らずの男どもの慰みものになる前に、淡い恋心を抱いていた信介という幼なじみに最後に会って男女の契りを交わしたいと願う。山崎ハコさんの独特のやるせない歌声が悲しく、境遇は理解できないもののいつも泣きそうになってしまう歌だ。

 

2.命にかかわる救いのない編

《昭和枯れすすき》さくらと一郎

いやぁ暗い。「この街も追われた、、、」だもんなぁ。挙げ句の果てに「いっそきれいに死のうか」か、、、。何をしたんだろう、この2人は? 何か犯罪でも犯したのか? さくらと一郎みたいなザ•昭和なネーミングもナンだが、コンプライアンスに抵触するような歌詞は、今なら発売できないんじゃないだろうか。

《ロード》虎舞竜

当時私の嫁さんは、この歌に我が身を重ね大いに感情移入していた。自分自身と当時幼かった我が子を歌詞の中の女性に投影し、涙ぐんでこの歌を聴いていた。なんとこの歌、第14章まである(1章ずつ別々のトラック)。それら全てを聞いたわけではないが、第1章、第2章を聴いただけでもうお腹いっぱいだ(笑)  

《うらみます》中島みゆき

山崎ハコさん同様彼女が歌う歌には命の危険がある(笑)  オンナのドロドロっていう言い方があるけど(これは性差別なんだろうか?しかし女性からしか聞かないし、しばしば耳にするのだが、、、)、その真っ只中にあってその中で翻弄されたオンナの情念が渦巻く。別れる女性に「『優しくされてただうれしかった』とドアに爪で書かれた」部屋に帰ったとしても、私ならその夜寝られないと思う。悲しくて辛くて哀れすぎる。

 

3.切なくて救いのない編

《ハッピーエンド》back number

back numberの逸品。この歌は本当の本当に身もふたもない。これ以上ないほどの惨めさと諦め。抜け殻になった我が身から発する空虚な言葉。「お嬢さん、そいつぁクズ男だ。あんた、つまらんヤツに引っ掛かったんだよ。だってそいつ、アンタのことなんかもう屁とも思ってないじゃないの」。主人公の女の子にそう言って親子丼でも作って食べさせてあげたいものだ。

《さみしさのゆくえ》荒井由実

名曲である。本当は傷つきやすい純真な自分を、強がって見せていた若い頃。そんなある日、こんな私でもいいと言ってくれたある男性の一言を今でもどこかで信じ続ける一途な女性の儚い願いが、小さな音をたてて壊れた。胸が痛くなるとはこのことだ。ユーミンが天才たる所以はメロディもさることながら、誰もが持つ心のひだを震わせる歌詞だと思う。聴いたことのない人に是非教えたい一曲。