孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

ネイティブとカタカナ

かなり前になるが、生徒の研修旅行でロンドンに行った時のこと。日本で留守番する講師に土産をと思い、喫煙具や革の小物、フライフィッシングの道具なんかを扱う、いかにも英国らしいちょっと高級な大人の趣味の店に入った。お酒が好きなその先生のために私が探していたのは、アウトドアで使うウイスキーの容器だった。店のオヤジは私のプレゼントのセンスをしきりに褒めたが、私は飯盒を小さく薄くしたようなその酒の入れ物の正式な名前を知らなかったので尋ねることにした。オヤジが教えてくれたのはいいのだが、何回聞いても何と言っているのかがわからない。その言葉をあえてカタカナで表すと「ヒップラァ(スク)」だろうか。日英双方の人間がそれぞれの母国語で相手の言うことを理解しようとして大笑いしたが、それが「ヒップフラスコ」であることは夜になって知った。パンツの後ろポケットに入れてフィットするような形になっているからヒップということらしい。

こんな風に英語にはカタカナ日本語からはかけ離れてしまっている発音の言葉が他にもたくさんある。これまでにエーッ!?と驚いたものを並べてみたい。

 

《マッダナォ》

この単語のアクセントは「ダ」にある。ご存知マクドナルドだ。はじめて日本にマクドナルドをマーケット展開する準備段階では、 "McDonald's" の読み方(日本語での店名)はアメリカ人が発音した音の聞こえ方に近い『マクダーナルズ』にする案が有力だったらしいが、日本人には馴染まないという理由から所有格の ' Sも取ってしまい『マクドナルド』としたという経緯があるという。しかしこのハンバーガーショップがネイティブの会話の中に出てくる時には、さらに表題のように変化してしまい、全く理解できない(笑)  ちなみにこの店のカウンターで最初に訊かれるのは「フォヒァオトゥゴ?」(For here or to go?)で、日本で使うようにイートインとかテイクアウトとは言わない。ま、知ったかぶりである(笑) 

もし今から約50年前「マクドナルド」ではなく「マクダーナルズ」に決まっていたら、関西人は「マクド」ではなく「マクダ」と呼んでいただろう。その場合のアクセントは「ク」にある(笑)

ちなみにフランスでは「マック」は売春の仲買人やポン引きの隠語になるため、その略称は避けられているというが本当だろうか? 

《ハッダァ(グ)》

ホットドッグだ。「ホットドッグ」とカタカナ読みで注文しても、まぁわかってもらえない。特にアメリカではO(オウ)の発音が「ア」に近い、というより「ア」だ。そこがイギリス英語との大きな違いだと中学の時に習ったが、O(オウ)は「エ」に聞こえることもある。Dragonは「ドラゴン」ではなく「ドゥアゲン」、Lemonは「レメン」に近いように感じるのだが、この件についてはネイティブの意見を聞きたいものだ。

ダッカァ(ム)》

ドット・コムです。私は好きでFM802をよく聴くが、時折カッコつけて英語で局のCMが流れたりする時には「802」が頭に付くから「エイロォツゥダッカァー(ム)」(802.com)になる(笑)

《プリリィナベァッ(グ)プリィ(ズ)》

カタカナで書くと「プット・イット・イン・ア・バッグ・プリーズ」になる。英語は母音で始まる単語はその前の単語の最後の子音と混ざるから、イット、イン、ア、それぞれの言葉はその前の子音とくっ付いて表題のように発音される。日本語に訳すと『袋に入れてください』ですね。putのtはタ行のはずなのにラ行の発音に聞こえるのは「シャラップ!」と同じ。 “ shut up ” なのにどうして「ラ」なんだろうと中学の頃は思ったが「シャタップ!」を早口で言うと「タ」より「ラ」の方が遥かに言いやすい。必然である。

《ナラロォ(ル)  》

「どういたしまして」的な言葉。でもそのフォーマル度や語感や印象なんかは日本に住む私にはわからない。表題の言葉は”not at all“ ですね。この「どういたしまして」は、中学校の時 “thank you” に対して “you are welcome” と返すのが決まりのように習ったけど、日本にはカジュアルにもフォーマルにもビジネスにも普通に使える「どういたしまして」が無い。心を込めて「有難うございました!」と言われても、「いやいや大したことはないですよ」くらいのものだし、「助かったわ〜」と肩を叩かれても「かまへんかまへん」と微笑むだけだ。しかし英語ではこの「どういたしまして」に相当する言葉の多いこと(笑)! 邪推だが、きっとイギリス人は日本人より他人のために何かをすることが自然ではなく、そんなことをやろうとすると個人的な「わざわざ」とか「あえて」の労力が必要になる。だから誰かが何かをしてくれたことは自然ではない特別なことなのである。よってそのお返しの言葉も発達した、、、。違うか(笑)

《掘った芋イジンナ》 ー番外編ー

ジョン万次郎氏作で空耳アワーの定番であるこのフレーズは、実際通じるのか通じないのか?私は2人のイギリス人に試してみたが1人には通じたのであながち実証のない戯言ではない。しかしこれと同様に空耳的なワードは多い。その中でも “Wash your hands”「わしゃ変」と、“Can you ski? “「巨乳好き?」の2つは秀逸だと思う(笑)

中学の頃から洋楽を聴いていたが、その曲の訳詞より、意味を持たない記号としての英語が脳にインプットされてきた。ビートルズサイモンとガーファンクルなんかは、今でも意味はわからないまま歌詞を口ずさめる歌は多い(笑)  ビートルズの “ Let it be ” はLPレコードのことを歌っていて、「LP!LP!」と叫んでいるもんだと長らく思っていた私。あ、LPといってもわからん人がほとんどか(笑)