孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

礼装(男性)

 日本人の意識の中では礼服を着る際、絶対的な価値や伝統的な基準に基づかない。『黒ければいいんじゃないの?』に近いように思う。日本人には『礼を尽くすために身なりを整える』という価値観が無いからだ。着物を着ていた頃には和礼装として国民全員が同じもの(紋付羽織袴、振袖や留袖)を身につけたので問題はなかったのだが、今から100年ほど前から私たち日本人は、訳もわからず洋服を着ることになった。洋装の『格式』というものを理解しないまま形だけ真似することになった訳だ。結局そのまま時間が経過したため、今でも日本人の多くは洋装での礼服というものをよく理解していないままだ。だから逆に『格式』やそれに基づく『型』にこだわる意味がわからず、自由度が増してしまっているのが現状なのである。

 

 数年前に部下の結婚式にお招きいただいた時のこと。披露宴が始まる前、私の元に新郎のお父様がご挨拶に見えられたのだが、この方はなんと燕尾服を着ていらっしゃった。よくこんなものを持っておられるなぁと思い、式の後で新郎に聞いたところ、このお父様は社交ダンスが趣味なのだという。なるほどとは思ったものの、千鳥ノブさんではないが『ちょっと待て!』だ。昼過ぎに始まる披露宴だ。そんな時間に燕尾服はあり得ない。また私の個人的な感覚ながら、格式という意味では、一生を通じて燕尾服を着る機会は99.9%の人にはない。それでももし身につけることがあるとするなら以下の場合に限る。

 

①宮中の晩餐会にお招きされた時
文化勲章などのきわめて格式の高い褒賞を天皇陛下や皇室の方、あるいは国から授与される時
③クラシックの演奏会で指揮者となる時、またはクラシックピアノのコンサートで演奏者である時
④社交ダンスをマジでやる時
⑤七五三で撮影用に着る時

 

 ディズニーランドのミッキーは真っ昼間から割とカジュアルに着ている(笑)が、燕尾服は最上級の格式の場でしかも夜にしか着ることはできないし、他にも絶対崩してはいけない詳細な取り決めが少なからずある。モーニングと燕尾服の形の違いさえわからない日本人が、予習無しでお手軽に着てはいけないのではないか?とあくまで個人的には思う。

 

 さて男性の礼装についてこまごま述べたが、もちろん同じく女性にも同じようなことはある。次の機会では女性の礼装について、うるさいと言われつつボヤいてみたい。