孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

ムイムイ 2 「バッタとハエ」

【バッタ】

 草むらのホープ、それがバッタだ。格付けは、一番がトノサマバッタ、二番がショウリョウバッタである。トノサマバッタは何故トノサマか? この答えは、子供時代に少しでも原っぱで走り回った覚えのある人ならわかろうが、あの大きさ、色、ジャンプ力、そして風格。まさしく殿様である。今でもヤツを見ると、何故か胸が踊る。そしてショウリョウバッタだ。コイツのメスは時々本当にでかいのがいて、びっくりすることがある。脚部をいれない体長で10センチ以上、堂々たる体格のバッタだから、重量感も抜群である。ちなみにオスは形がスマートで、茶色のラインが体側に走る、なかなかスタイリッシュなヤツだ。やめときゃいいのに、跳ぶ時にわざわざ、チチチ…と音を立てるから、その音をたよりにガキどもに追いかけられる。あだ名もキチキチバッタと呼ばれる。キチキチの大型は少ないから、ガキどもの間でもなかなかの人気だ。飛翔力も、トノサマバッタクラスになると、JUMPじゃなくてFLYに近い。ススキ原で彼らを見かけても幼児には捕まえられない。一度地面を蹴ったら次の降下点までの距離が最低でも2,30メートルはあるからだ。バッタで最も捕まえにくいのがこのトノサマバッタ。ちなみに蝶々ではアオスジアゲハが、捕獲する難易度において子供たちにとっての最難関だと思う。機会があれば後日蝶々についても書こうかな。

  

 バッタ類は一般に大体細長い葉っぱが生えてる草むらにいる。ススキのようなシュッとした葉っぱが好きらしい。丸い葉っぱ、フチがギザギザの葉っぱしか生えていないところにはあまりいない。例えばセイタカアワダチソウが生えてる原っぱ(山を切り崩した開発中の分譲地なんかに多い)にはあまりいない。そんなところの地面はイヤに白く、固くてカチカチだ。いたとしてヒシバッタくらい。この小さく地味な黄土色の小兵は、ガキどもには見向きもされない。

 

 また草むらには、当然そこに生えてる草の枯葉が堆積しており、マットのようになっている。枯葉のマットをめくると「跳ねる」バッタではなく「歩く」バッタがいる。夏~初秋にはコオロギがマット下の住民代表だ。小昆虫が死ぬからコオロギたちの食料が供給されているわけだ。彼らは雑食だから草だけ食っててもダメで、家でコオロギを飼う時のエサも、雑食である食性を考えてキュウリやナスビの上に煮干しや削り節をのせて栄養バランスをとらなきゃならない。エサが足りなかったり、量は足りていても動物性のものが不足すると、すぐに共食いをするから注意を要する。でも考えたら共食いって怖い。昨日の友も今日の食糧だ。

 

 倉庫、床下、裏庭といったジメッと薄暗いところの住人がカマドウマである。しかしこのムシが「住まいの害虫」という本に載っていたことには心底驚いた。何故ならこのムシは人への危害は直接的間接的問わず、ないからである。では何故害虫扱いなのかと言えば、「見た目が気持ち悪い」との理由が述べられていたのを見た時には、私は筆者の人間性を疑わざるを得なかった。なんという偏見と狭量!さらにその本ではゲシゲジも害虫とされていた。アイツもカマドウマ同様、何も悪さはしない。突然足元に出てきて、次の瞬間驚きの速さで逃げ去るから心の底からびっくりするけど、ヤツはゴキブリを捕まえて食っちゃうんだぜ!じゃあ我々の頼もしい味方じゃないか(笑)!

 

 

【ハエ】

 ハエは汚ない。ゴキブリと並んでこれ程人々から嫌われているムシはいないだろう。ケガレの象徴である。幼虫は言わずと知れたウジである。これがまた気持ち悪い。脚が無いんだよなぁ、アイツら。自分が食べるものの中に身体を埋め、胴体の伸縮のみで動く。だから足場を失うとポロポロとこぼれて落ちてしまうのである。しかしこんなに気持ち悪いものを素手で触り、嬉々としている人種がいる。それは釣人だ。ワカサギを釣るときの優れたエサとして使ってる! 私は基本的には、釣りをする人とは価値観を共有できるが、このエサだけは触ることに抵抗を感じる(やったことはないけど)。釣り人たちからサシと呼ばれるヤツらの気持ち悪いところは他にもまだあって、成長が早いこともその一つだ。産卵から、早ければ1,2日で、もう幼虫(ウジ)になり、それから1週間で蛹化、たった4,5日の蛹の期間を経て、卵から通算して2週間後にはもう成虫になってしまうのである。カブトムシなんかを飼っていると、小バエが多数発生するが、あいつらの生命力はすごい。成虫はすぐにカッブルになり、ツインで飛び回る。あっという間に可愛がっているカブトムシじゃなくて、そこに巣食うハエを累代飼育をしていることになってしまうのである。

 

 今一つ。カース・マルツゥと呼ばれるチーズをご存じだろうか。このチーズは要するにイタリアの伝統的な「ウジムシ入りチーズ」なのであるが、ある種のチーズに これまた特別なチーズバエに産卵させ、卵から孵ったウジがチーズに独特の発酵をもたらすという れっきとした食品らしい。世の中にはとんでもないものがあるもので、、、。しかし。私は昔から好奇心が強い。おかしな言い方だけど、食べて健康に害のない食品ならぜひとも一度は食べてみたい。かの有名なシュールストレミングも試してみたいのだが、一度開缶したら、以後2か月は臭くてその部屋は使えないという事を知り、二の足を踏んでいる(笑)

 さてカース・マルツゥである。8ミリほどの半透明の白い虫がウジャウジャいるチーズは、きっと夢に出るほどおぞましいんだろうけど、ぜひ一口試したい。このウジは触られると15センチ程飛び跳ねるらしいから、食べるときは眼鏡をかけるらしい。Wikipediaによると、チーズから幼虫を取り除く人も、幼虫ごと食べる人もいるんだと。ウギャァァァァァァ!!!!!!

 

 さらにもう一つ。私が子供時代、ばあちゃんが少し離れたところに住む私たち家族への土産にと、干しサザエを作ってくれようとしたことがあった。しかしあいにくの天気で、それが干物になる前に雨に降られてしまった。そうなるともうダメだ。軒に吊るしていた10個程のサザエは、ハエたちの格好の産卵場所になってしまったのである。ほとんどアメリカのB級映画の特殊映像のように半生のサザエの身を縦横無尽に動き回る無数のウジムシ!!恨めしそうにそれを横目に見たばあちゃんが私にポツリ。「持って帰るか?」

持って帰るかよ! 今は亡き 愛するトワばあちゃんにまつわる 私の子供時代のおぞましくも懐かしい思い出である。