孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

柔道女子48キロ級

 東京オリンピックの開催がなんとなく怪しくなってきているが、後で振り返った時にただの思い出話になることを祈るばかりだ。

 さて様々な競技がある中でも、昔から柔道は最も好きな競技の一つだ。しかし柔道ほど時代によって面白くなったり、逆につまらなくなったりする競技はないのではないだろうか。何が面白いって、一瞬で逆転勝ち(負け)になってしまうあのヒヤヒヤする感覚は、剣道など「道」の付いた日本の武道以外にはあるまい。そんな一瞬の研ぎ澄まされた技の妙に水をさし、また柔道が面白くなくなったのは、「技あり」未満の技のポイントを設定したことに起因すると思う。「技あり」の下に「有効」、さらにその下に「効果」というせせこましいポイントが設定され、さらには試合時間終了時に同点だった場合には、審査員が旗を上げて優勢勝ちを決めるという暗黒の時代があった。ひとたび「効果」を奪った途端に逃げに入って優勢勝ちを狙うというチマチマした柔道など武道ではない。

 私が個人的に好きな選手は、ごく最近48キロ級に転向した角田夏実選手だ。ちなみに私は豪快な投げ技も好きであることには違いないのだが、相手を恐怖のドン底に陥れる絞め技や関節技が好きだ。角田選手の持ち味は、巴投げをきっかけに寝技,絞め技とステップする、相手にとってはこの上なく恐ろしい連続技である。

 さてその角田選手は元々52キロ級にいた。その階級には阿部一二三選手を兄に持つあの阿部詩選手が在籍しているのだが、実は角田選手は阿部選手に対戦成績では3勝1敗と大きく勝ち越しているのである。ここ最近になって階級を48キロ級に落としたことについて、角田選手自身は理由をオリンピック出場にこだわった末に出した答えだと言ってはいるようだけれど、それだと48キロ級には強い選手がいないみたいではないか。当然どの階級にも代表をかけしのぎを削る強豪がひしめいているから、48キロ級だから代表になりやすいなどということはあり得ないことだ。よってここ数年でメキメキ実力をつけてきた阿部詩選手と争ってもオリンピックに出られないかも?と思った訳ではなく、新進気鋭の阿部詩選手に道を譲り、自分は48キロ級で新たな柔道に挑む。角田選手は161㎝で48キロ級、阿部詩選手は158㎝で52キロ級であり、逆ならともかく角田選手にとっては減量がキツいだろうなぁとこれまた心配する。

 ・・・最近知った速報では残念ながら48キロ級の代表に角田選手の名前はなかった。そして52キロ級はもちろん阿部詩選手だ。しかしこの結果は彼女が自分で選んだことでもある。勝負の世界にたらればは無い。無いけれど、なんとも無念だ。きっと27歳の今年は、角田選手が出場を狙える最後のオリンピックだったかもしれない。オリンピックで角田選手の地獄のような技に戦々恐々とする外国人選手の表情を、フッフッフッと眺めてみたかった。彼女の絞め技、関節技は間違いなく世界最強で最恐である。ずるい考えであることは百も承知ながら、オリンピックが1年か2年延期となった場合、「試合を行う時に一番強い選手を選出する」という主旨で再選抜大会をするってのはどうだろう? ・・・良くないな。ダメだ(笑)