孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

国歌

 大きなスポーツの大会が始まる前、セレモニーの中で国歌がプログラムにある場合が多い。私は選手たちがちゃんと歌いもせずゴニョゴニョと口ごもりつぶやく顔が大写しになると、なぜちゃんと歌える人を呼んでこないんだ?と思うし、歌い手が来ないなら、せめて選手であるお前たちだけはちゃんと歌えよ、情けない!と画面を見ながらいつも私は文句を言っている。あの時間はすごく大切な時間だろうと思うから余計に腹が立つ。それでいいのか!?と。
 また国旗国歌を毛嫌いする一群があることは承知しているが、あなたたちには国を愛し、この国に生まれた誇りというものは無いのか?と聞きたい。

 しかし日本の国歌は無伴奏の独唱が一番だなぁと勝手ながら私は思う。ある女の子が歌うそんな君が代を初めて耳にしてから10年近く経つだろうか。選抜高校野球の開会式において国歌独唱をした野々村彩乃さんの君が代である。不思議なことに涙が滲んでくることに、自分でも理由がわからなかった。わずか高校3年生、制服で歌う天使の歌声に、これが日本の国歌、君が代だと思ったものだ。その後順当に声楽家になった彼女の声は本当に奇跡じゃないかと思う。


 一方他国の国歌は戦いがテーマで勇ましいものが多い。フランス国歌などは荒々しさと生々しさにおいてその最たるものだ。 

〽栄光の日はきたれり
圧政に抗する我らのもとに
血まみれの旗ひるがえり
聞け、戦場にあふれる
おびえた敵兵たちの叫びを…

 
 ちなみにアメリカでは「国旗規範」なるものがあり、それによれば国歌斉唱時、すべての人は起立した上で一般の人は国旗に向き、右手を心臓の位置に添えて直立の姿勢で立つように決められている。また国歌演奏の間、制服を着た軍人と元軍人は敬礼していなければならない。起立して旗に注目するだけの日本よりも随分細かいところまで決めるんだなぁと思う。実は私は君が代と並んで、独唱で聴くアメリカ国歌も大好きだ。

 これも今からちょうど10年前にスーパーボウルの開会式で歌ったジェニファー•ハドソンの国歌は彼女の身に起きた悲劇を知っていただけに、見ていて手には汗が、そして当然の如く涙が溢れた。前年に最愛の母、兄、そして甥を元姉婿によって殺害されたことで、その事実を受け入れ消化できずに、芸能活動から遠ざかっていた彼女が事件以来初めて表舞台で歌うアメリカ国歌を、是非多くの人に聴いてほしいなぁ。ホイットニー•ヒューストンの歌やチャリス•ペンぺンコの歌もそれぞれスゲェんだけど、それは人を唸らせる歌だ。
 あの日のジェニファーの歌は、聞いている全ての人を唸らせるのではなく黙らせた。