孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

「えう」と「たし」、そして「じゃない」

 息子がいる。先日自宅の枕棚を片付けていたらその息子が小学生だった頃のテストの答案が何枚も出てきて、当時のことを思い出し、しばらくそれで笑っていられた。その答案は「反対の言葉を書きましょう」という問題のテストだった。

  問1 上(うえ)

  問2 下(した)

 もちろん問1が下(した)、問2が上(うえ)が正答なのだが、愚息は問1を「えう」、問2を「たし」と書いて✖️をもらっている。横には赤字で「よく考えましょう」と先生に書かれているではないか! どうも担任は、考えればわかると思っているようだが、この問題はそう簡単ではない(笑)   何を隠そう笑えることに、私自身が息子くらいの歳に全く同じ間違いを犯しているのだった(笑)   いわば彼の解答は「血」の表れであり、理屈を超越して脈々と受け継がれてきた我が一族の特徴なのである。

 私は考えた。親として子供に正しい考え方を教えないといけない。息子を座らせこう切り出した。「あのな、上見てみ」息子は天井を見上げた。「そう。ほんなら上の反対見てみ」息子は床を見た。成功である。私はたったコレだけのことで息子に上下の概念を教えることに成功した、と思っていた、、、のだが。

 さて当時の息子の担任は余程好きだったのか、反対語の小テストを一定時期に何度か行なっていたため、残された答案には私の指導後のものも残っている。

  問1 上(うえ)

  問2 下(した)

 我が息子は問1を「上じゃない」、問2を「下じゃない」と書いて✖️をもらったのであった。前の時と同じく横には赤字で「よく考えましょう」と先生に書かれていた。・・・なんのことはない、私の指導は全く彼の心には届かなかった。しかし、息子は息子で考えたのである。その結果が「じゃない」だった。誰がそれを責められよう(笑)

 当時の我が家の全員で大笑いしたこの逸話、しかしよく考えたら「じゃない」はあながち間違いではないとも思える。例えば、「自然」の反対語は「人口」と「不自然」が併記されており、どちらも正しいらしい。不自然とは自然「じゃない」訳である。ならば「じゃない」はアリなのではないのか?

 そういえば反対語には納得できないものが多い(こんな風に考え始めるのが我が血筋の特徴である)。子供時分から納得していないのが「時間」の反対が「空間」であることだ。こればかりは最近も調べてみたけどやっぱりわからない。理解できないものを納得することは不可能だ。「金槌」の反対語だって「河童」なんだぜー! ナメてんのか! なんでも泳げない人のことを「金槌」といい、泳げる人のことを「河童」というかららしい。なんじゃそら(笑)   言葉の一部分の意味を抽出してその反対の性質のものを反対語にしていいならどうにでも作れる。河童は緑だから反対色の赤い梅干しは河童の反対語だし、河童は川に住んでいるから、山に住む天狗は河童の反対語である。

 私は、そして我が家系は、そんな風にひねくれて考えるのが好きなのだろう。「上」の反対は「上じゃない」で正しい。大いに結構だ。