孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

金縛り

 私は自分でも基本的にはホラ吹きだと思うが(笑)、これから述べることは、私の中でも数少ないシリアスな話だ。

 私には見える。見えてしまう。ホントだ。感じるのである。わかりやすくいえば霊などと呼ばれるものが。ただ不思議なのは、霊感の強い人と私が一緒にいる場合、その人が何かを感じているその瞬間、横にいる私は何も感じていないし、逆に私が感じている時、隣にいるその人は大体感じていない。
 今の家に引越す前の住まいではかなりの頻度で「それ」を感じた。私たちが住んでいたのは小さなハイツで、寝室は畳の部屋だったので出入口はふすまだったのだが、私は寝床に入った後でそのふすまの向こうにあるダイニングのテーブルに座る人たちの気配を頻繁に感じた。もう一度言うが、私はその辺りを「感じる」。我が家を訪れるのは男女の2人連れが多かった。時には施錠をしているにも関わらず玄関から入って来たし、足音もはっきり聞こえた。その2人は何やらボソボソささやき合い、絶望したようなため息をついた。
 金縛りという現象がある。初めてこの悪戯者に襲われたのはいつだったか。いるはずのない人が見えたりするのに、体が動かないから逃げることもできない! しかしこの不思議な現象にしょっちゅう遭遇した。でも私が金縛りが怖い理由は、霊なんかの得体の知れないものが見えること以上に、体が動かせなくなることに気がおかしくなるほど恐怖を感じる。なぜなら私は閉所がダメなのである。狭いところが怖い理由は動きが制限され、身動きがとれなくなるかもしれないからだ。体を動かしたくても動かせない状況になるのは恐怖だ。冗談では済まない。だからギューギューの満員電車はかなり辛い。ドラキュラは明け方になる前に急いで棺桶の中に入るが、私がドラキュラだったら、棺桶の蓋がパタンと閉まるのはNGだ(笑) 金縛りというものは、頭は起きているのに体がピクリとも動かないのだ。私の場合金縛りに遭う時には大体遠くで和太鼓が鳴っていることが多く、同時に天井が徐々に下がってくる。ジワジワ天井が低くなる恐怖! そうなると自分自身に暗示をかけないとヤバい。パニクってしまうのは身動きが取れないのを自分自身で感じてしまうことだから「体が動かない」という意識を頭の中から排除する。これがまた上手くコントロールできない時にはかなり苦しんだ。
 何はともあれなぜか今は霊には嫌われているらしい(笑) だから何も感じないし何も見えない。金縛りにもほぼ遭わなくなった。嬉しいんだけど、なんか変な感じであることは否めない。これが私の当たり前ではないような気がするからだ。