孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

うっせぇわ

 聞けばなんでも高校生だという女の子が歌う。うっせぇうっせぇ!と。そのシャウトは単に奇をてらったイロモノという訳ではなく、きちんと考えられた、しかし多分に屈折した世界が広がる。歌詞を聴くと、気が利く人にならないとダメだとか、いわゆる常識を持たないとダメだとかといった、既成の「いい大人になることが正しい」という考えなどバカバカしい!という価値観を叫んでいるように聞こえる。もしそうであれば彼女は正しい。なぜなら彼女は高校生である。若い、いや幼い。十代など世間に対する文句が服を着ているようなものだ。

 ここで どうして彼女は「うっせぇ」のかということを考えてみよう。十代の若者の生態を上手く言い得ているものとして、中(厨)二などという表現がある。「あいつメッチャ厨二やからメンド臭いわぁ!」などと若者同士で言ったりするが、言われた対象だけに限らず、十代は全員厨二なのだと思う。要するに総メンド臭い年代なのだ。

 厨二たちは、自分は周りと違うんだと思いたい、また思われたいんだと思う。だからみんな同じに見える世の大人たちを見て、お前らと一緒にするな!お前らみたいにはなるもんか!と叫びたいんだろう。この歌を歌う少女と同じ年代の若者たちも皆似たようなことを日常的に感じているから、自分たちの気持ちを代弁してくれているような共感を感じて大反響だ。しかし若いということは未熟であるということでもあり、何かにつけていちいち反発したい気持ちとは裏腹、その反逆は確固たる理論に裏打ちされたものではないから、強がりを叫んでみても自分に自信はない。一人になった時に我が身を振り返って自己嫌悪に陥ることも多い。十代というのはそんなものであり、誠に鬱陶しいが同時に心から可愛いとも思える。

 強い弱いは別にして、人は皆承認欲求を持っている。自分はエラい、スゴいと思われたい。キレイだ金持ちだと思われたい。頭がいい、センスがいい、器用だ、歌がうまい・・・。キリがない。しかしこの承認欲求というバケモノと、自己批判という悪魔の2つの敵と必死で闘っているのに、周りからゴチャゴチャ小言を言われたり目に見えない同調圧力がかかってしまう現実に対し、少女は今日も叫ぶのである。うん、叫ぶがいい。人生において今はそんな時期だ。