孤高の専門学校校長

感じるままに言いたい放題

ネーミングセンス

 ネーミングは難しい。つくづく思う。ネーミングで印象が大きく変わる。アットホーム感が出たり、先進的で未来っぽいとか、老人にも優しそうとか。社名で売り上げが大幅アップしたという話には事欠かない。最近ちょっとネーミングというものにアンテナを張ってみたところ、いくつか気づいたことがあったので並べてみた。

 私は主夫なので買物のためにスーパーには毎週行くが、家の真ん前にあり、自宅冷蔵庫の延長のように使うQモールで見つけた商品が本日のトップバッターだ。それは練り物コーナーで見つけたカネテツデリカフーズの「ほぼシリーズ」である。売場に並んでいたのは「ほぼカニ」だった。私は売場の前で膝が砕けそうになった(笑)のだが、調べてみると同社は「ほぼカニ」「ほぼホタテ」「ほぼエビフライ」「大粒ほぼホタテ」の4種類を シリーズとして展開しているらしい。カネテツといえば言わずと知れたカマボコの老舗である。これら商品も要するにカマボコなのだが、この秀逸のネーミングはどうだ!? 「ほぼ」って、、、(笑) 昔から私はこんなものを見つけたら買わずにいられない性格である。当然その「ほぼカニ」を買い求め、食べた。その結果 その商品は 見た目もそうだが 食べたら本当に「ほぼ」本物だった。《くら寿司》で提供されている「究極のカニカマ」も 当然セオリーに則って食べた(笑)が、もしかしたらそのカニカマは同社からの仕入れなのかもしれないと勝手に思っている。スゴいぞカネテツ! 恐るべし!

 ミソ業界からはハナマルキにご登場いただこう。大ヒット商品「おかあさん」だ。かすりの着物を着た幼い女の子が「おかあさ〜ん!」と夕日に向かって母親を呼ぶCMは郷愁を呼んだものだったが、ある日 ミソ業界に革命が起きた。ダシ入りミソの登場である。別でダシを取らなくてもミソ汁が出来るという、究極の便利商品だ。以降改良を重ね、今では鰹と昆布のダシの香りもかぐわしい 風味豊かな傑作が陳列棚に並ぶ。その名も「だし入りおかあさん」である。だしの入った「おかあさん」だから「だし入りおかあさん」なんだろうけど、、、なんかなぁ。“とけやすくておいしい” って書いてある だしのきいたおかあさん、食べてみてくれ マジで美味しいから。実はウチはいつもこれだ(笑)

 次は農産物。野菜なんかにも触れてみよう。長芋も負けていない。その名も「ネバリスター」だ!  20年以上前にイチョウイモの在来種に長芋である「ずんぐり太郎」を交配してできたらしい。出願時の品種名称は「トロロスター」だった! 楽しすぎるぞ!長芋業界のネーミングは!! 決してフザけてるわけじゃないのであろうところがGOODだ。私は個人的には「ネバリスター」はこれまたセオリーに従って既に食べているので、ぜひ交配前の「ずんぐり太郎」を食ベてみたい(笑) それもまた味わいのある名前だ(笑)

 50代以上の方々には素通りできないリンゴが「ピンクレディー」だ。生産者団体の日本ピンクレディー協会(!!) が現地から生産や出荷を委託されている、酸味と甘みのバランスの良さが売りだという。私だけかもしれないが、最近リンゴを食べなくなった。子供の頃は皮をむいたリンゴを皿に盛って食後に食べた記憶も嬉しかった思い出だし、風邪をひいたらリンゴを絞ってくれたものだ。しかしこの「ピンクレディー」というネーミングは素晴らしい。ぜひ食ってみたいと思うもんね。こんな名前のリンゴが食卓にあれば 家族の団欒が華やぐというもんだ。

 最近は米も手ごわい(笑) 昔のように「ササニシキ」や「コシヒカリ」だけってわけじゃないからね。私はサッカーが好きなので、山形をホームとするチームのユニフォームに「つや姫」という米の商品名が染め抜かれているのは目にしていた。その他知ってるものだけでも「あきたこまち」「きぬひかり」「キララ397」「ななつぼし」なんかがあるし、調べるとそれ以外にも出るわ出るわ「金色(こんじき)の風」「銀河のしずく」「新之助」「青天の霹靂(へきれき)」「どんぴしゃり」「ふっくりんこ」「まっしぐら」「森のくまさん」などなど。これらがいちいち冗談ではないのがイケてるが、米の名前はこの先果たしてどこに行くのか、、、(笑)

 魚だって黙っちゃあいない。関サバ関アジなんかは産地が魚の名前の前に付いただけだけど、有名になって結構な価値を持ってしまった。しかし1匹 3,000円も4,000円も出してアジ食べる?魚食いの立場で言わせてもらえば、冬のサバや夏のアジはとれたてで刺身で食えるほど新鮮なものならどこで食ってもまず間違いなく美味い。産地が関でなくてもだ。氷見ブリや大間マグロも同じなんだろう。ブランドブランドっていうけど、名前が先行してるものがほとんどのような気がする。隣町の漁港でとれた魚は「関○○」じゃないっていうだけ値が落ちるんだもん、とった漁師は面白くないわなぁ。回遊魚だから ほぼ全く同じ魚だよ(笑)
 関サバ関アジと同じく 豊後水道でとれた「マグロヨコヅーナ」っていうのもある。なかなかのクセ者だ(笑)。ヨコヅナじゃなくヨコヅーナと延ばすあたりがラテン風だ。私の感覚ではマグロだったら純和風じゃないのか? とは思うけど、、、。脱力系の急先鋒は 鳥取の「お嬢サバ」だ。これをふざけていないと言い切る訳だよ。日本の漁業の明日は明るいとは思わないか(笑)!? 「お嬢サバ」。食べてみたい、、、。

 私が子供の頃、プリンやヨーグルトというものは牛乳屋でガラス瓶に入って売っているものだった。その後プラスチック容器に入ってるプリンが出てきたけど、そのプリンを皿に伏せて容器の底にフォークで穴を開けて皿にのせて食べたものだ。プラスチックのカップのまま食べるんじゃなく、お店で注文した時のように富士山型になるのが嬉しかった。でもフォークで容器の底に穴を開けるのは中々に力加減が難しかったのだが、そんな煩わしさを解決したのが「グリコ プッチンプリン」だった。あの小さな突起は革命だった。子供心にアレをプチッとする時はワクワクしたものだ。
 はてさてヒット商品には追随する 似たような商品が出るもので、かなり昔のことだが 私の記憶ではTVCMまでやっていた後発商品に「ポッキンプリン」があった(笑) 仕組みは「プッチン・・・」と全く同じだ。私は個人的にこの安直さは好きだったなぁ(笑) 今調べても同じメーカーから当時と同じ商品は出ていない。

 最後に、学校に勤める人間としては禁断の領域に入る。以前「奥さん米屋です」というタイトルのAVがあったと聞いた。これを聞いた時、私は新しい時代がやってきた と思ったものだ。今も昔もAVのタイトルは 治外法権的な部分があるために、掟破りの仁義なきパクリが横行し、完全にカオス化しているようだ。ちょっと検索しただけで楽しそうなタイトルがいくつも出てくる。その中でも「マゾの宅急便」と「部屋と猥褻と私」っていうのがグッときた(笑) こんなタイトルがはじめにあって『タイトルだけは決まっているんだけど、企画は任せるから1本脚本を書いてくれ』って言われたら、創作意欲がムクムク湧くだろうなぁ(笑) パロディのネーミングはセンスが生きる。この2作品のタイトルを考えた人とは ぜひお会いしたいものだ。きっと機転の利いた頭のいい人だろうと拝察する。

 私が働いている専門学校は、広報的な意味としては ①高校生とその保護者、②卒業後に入る美容業界 と、この2つに向けた戦略が必要になる。それぞれにどう感じられるか?っていうのが問題である。我が校は校名がカタカナなので、先進、軽やか、お洒落 という印象は与えやすい。しかし逆に 落ち着いた感じとか堅実さが出しにくく 極端な話 チャラいという印象を持ってしまう人だっていると思われる。校名は人の名前同様 軽々しく変えることはできないが、学校運営に伴う授業の仕組みやイベント、その他CMをはじめとする広報活動には全て、そのタイトルや名前をどう設定するかが成果に大きく関わってくるのは事実だ。

 名は体を表してしまうのが古からの道理ならば、それを逆手にとって、素晴らしい中身を想像させるような名前を付けることは 今やマーケティングの基本であり、目に見える商品に限らず、題名やテーマは良い結果を得るための最重要ファクターの一つといえる。その意味では子供につける名前は、その子が学生時代を経て仕事に携わる時や、その後時間が経ち 誰かに教えを与えるような立場になった時に、周囲からの信用度において 少しでもマイナスに作用するかもしれないと想定できるなら、避けてあげた方が良いんじゃないか、というのが私の考えだ。

とりかえし
つかないことの
第一歩
名付ければ
その名になるおまえ

甚だ僭越ながら 名付けについて、子供の幸せを願う親の思いを表し尽くしているなぁと感じる 俵万智さんの一首を紹介したい。